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九州保育三団体協議会 保育施策等研修会

令和2年1月10日(金)
KKRホテル熊本五峯・城彩

 

○挨拶 九州保育三団体協議会会長 佐藤成己 氏

新年明けたばかりの中、遠くは札幌から、全国、九州各地より350名を超える参加者を頂き、本当にありがたい。今回は以前熊本にもいらっしゃった矢田貝保育課長をお招きし、保育を取り巻く現状についてお話を伺いたいと思う。先般保育団体が予算要望したことがほとんど受け入れられていると聞いている。今後の保育がどのようになっていくのか、よりよい保育や働きやすい環境の実現に向けてしっかり勉強したい。

 

 

○演題「保育行政の動向と課題及び令和2年度保育関連予算案について」
         厚生労働省子ども家庭局保育課長 矢田貝泰之 氏


自己紹介

  • 以前熊本にいたときは、潮谷知事の下、保育行政に携わっていた。ちょうど赤ちゃんポストが出来た時期。熊本では少子化対策課長として関わる傍ら、自身も子ども2人が保育園に通い、利用者としても大変お世話になった。
  • 厚生労働省に戻ってからは、介護保険の改定、診療報酬の改定、生活保護など社会保障、福祉分野に関わってきた。すべて財務省と交渉を行う立場だったので、その経験を保育分野でも生かしていきたい。

1.保育を取り巻く状況

  • 厚生労働省の人間はまずp3〜p5に示してある図を常に意識して仕事をしている。福祉は国の予算の中でも大きい割合をしめており、これを念頭に置きながら考えていかなくてはならない。
  • 社会保障では常に2025年を意識して動いている。2025年は65歳以上人口が一番多い年になり、日本の介護が倒れないように介護保険を作った。今ではデイサービスの車が街を走り回り一つの産業となっている。
  • 2025年以降のこれからの社会保障は、65歳までの労働人口が70歳まで働けるような社会にシフトしていく必要があるということが一番言われている。いわゆるシルバーパワーをどう生かすか。2025年以降をどうプランニングするのかという時期にさしかかっている。
  • p4の歳入の状況はいわゆる「ワニの口」と言われるが、平成2、3年頃までは税収と歳出があまり差は無い状況であったが、それから約30年常に国の借金が増え、今では1,000兆ほどあると言われる。
  • いつも財務省と交渉するとこの歳入歳出の事を一番に言われ、「将来の子どもたちのために仕事をしましょう」と言われるとつらいが、今の保育を守っていくのが保育課長の仕事だと思っている。
  • p5の資料を見ると、2020,2021年度は75歳以上人口の増加が少ない。これは戦争で出生数が少ないから。この2年は実はまだ余裕がある。本当に厳しいところは2022年以降の5年間。ここをイメージして後期高齢者の医療負担を2割にしてはどうかという議論につながっている。
  • p6は国民の希望と実際の出生率に1.8→1.44というギャップがある。これをなんとか埋めたい。
  • この乖離を生み出している要因は、結婚では経済的基盤、雇用・キャリアの将来の見通し、安定性、出産では子育てしながら就業継続できる見通し、仕事と生活の調査の確保度合い、特に第2子移行の夫婦間の家事・育児の分担度合い、育児不安の度合いが考えられる。
  • 少子化対策を考えるときに、子育ての仕方が分からない若い夫婦が増えてきた。保育園に通っているご家庭はまだつながっていると思うが、保育園に通っていない家庭に子育てのノウハウや支援を行うことが、少子化対策や虐待防止などにつながっていくと思われる。保育園にも今後そのような役割を期待したい。
  • 消費税増税分を社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)に使えるようになり、子ども・子育て支援新制度がスタートした。あと0.3兆円分が残っているが、以前に比べて子育てにも予算が来るようになってきている。
  • 予算は突然下りてくる瞬間がある。無償化のタイミングで1歳児の6:1→5:1も入れておけば…と思った。予算を通すタイミングがあると思う。突然くるチャンスのために、常に準備をしておくことは重要。

2.待機児童対策

  • 九州は全国の1/5の待機児童がいる。6,000人。九州は多い地域となる。市町村別でもワースト5は九州(沖縄2、福岡3)
  • 待機児童数は全体で見れば減少傾向であるが、ここ3年待機児童が増加している自治体もある。各自治体における待機児童の特性に応じたきめ細やかな支援が必要。
  • 女性就業率はもう80%を超えている。令和2年6月に令和3年度の骨太の方針を作らなければならないが、まだ保育所を増やす施策が入ってくると思う。各市町村でも、5カ年計画を作っている時期なので、ぜひしっかり見て保育園としての意見も盛り込んで欲しい。
  • 人口減少地域の保育についても考えていかなくてはならない。地域から保育がなくなってしまってはいけない。次のプランの中では人口減少地域の保育についても盛り込んでいきたいと思っている。

3.保育人材の確保について

  • 新規資格取得支援、就業継続支援については引き続き各種施策を行いたいと思っている。ただ市町村が取り組まないとどうしようもないので、各市町村とよく話し合って頂きたい。
  • 保育士等の処遇改善も年々増加している。積み上げ方式は絶対維持した方が良い。介護と障害福祉は包括方式になったが保育が2%増えている間に障害福祉は0.47しか増えていない。包括になると増えづらい。積み上げ方式は死守すべきだと思っているし、今回もその意気込みで財務省から守った。
  • 処遇改善で保育士の給与もかなり改善されてきたが、150万人以上いる保育士資格を持っている人の中で、保育の仕事をしていない潜在保育士の現状もある。保育の仕事が大変だというイメージが変わるよう、働きやすい保育環境になるように取り組みたい。

4.幼児教育・保育の無償化について

  • 無償化については、皆様には大変ご迷惑をかけたが、消費税の引き上げ分を利用して10月より無償化になった。副食費については徴収について事務負担をお願いしているところ。申し訳ないが、よろしくお願いしたい。

5.子ども子育て会議における検討

  • 平成28年の実態調査と平成30年の実態調査では大きく数字が違った。財政当局は包括方式と土曜日減算を狙っていたが、平成30年の数字は中小企業の3.1%を下回ったため、これ以上削減できなくなった。
  • 10月移行はこの資料をもってほぼ毎日財務省や議員会館を回ってずっと言い続けてきた。実態調査は面倒ではあるが、調査の用紙が来たときはぜひ協力して欲しい。とても効果がある。
  • 土曜日の利用者割合による減算は、あまりにも保育園に影響が大きいため、財務省にもかなり説明した。また平成30年の3月というデータの時期が良かった。土曜日を1日だけ開けていない園が1割くらいあったが、これは3月31日が土曜日であったからだと思う。そこを理由に土曜閉所をした場合は日割りで減算し、利用者割合による減算は行わないように交渉した。
  • 物価調整費681円は、これまで副食費用が年々上がってきている分として計上されていたが、保育園でも給食や人件費等にこれまでも使われてきただろうから、今後も人件費として残すようにした。財務省からもだいぶ「筋が違うのでは」と言われたが、そこは現実に各保育園も大変だから、と残すことができた。
  • これまで「入所児童処遇特別加算」はわかりやすく「高齢者津活躍促進加算」(仮称)に名称変更する。