現在、何かと話題になっている「次世代育成支援対策推進法」(以下次世代法と記す)。このいかにもお役所が頭をひねりあげて考えたようなお堅いネーミングだが、保育業界にこれまでにない新たな風を吹き込まんとしているものらしい。そこで、今回は二つの研修会を手掛かりに、「NL 〜次世代法支援特集〜」としてお送りしたい。
先ず、先月27日ホテル日航で行われた「次世代育成支援対策推進法研修会」から、日本保育協会常務理事、菅原善昭氏と厚生労働省政策企画官(社会保障担当参事官室併任)の井原和人氏の講演をハイライトで記載する。
続いて、今月3日に長崎にて開催された、九州青年部会主催の「明日の保育園経営研修会」から、淑徳大学社会学部教授で「次世代育成支援施策の在り方に関する研究会委員」(以下研究会と記す)でもある、柏女霊峰(かしわめれいほう)氏による講演のハイライトを記載する。
以上の研修会を踏まえて、現在「次世代育成支援対策推進法」とはどういうものなのか、またその中でどのような施策が検討、実施されようとしているのか、考察していきたい。
期日 | H16.1.27 |
場所 | ホテル日航熊本 |
主催 | 熊本県保育協会 |
講師:厚生労働省政策企画官(社会保健担当参事官室併任) 井原和人氏
講師:次世代育成支援施策のあり方に関する研究会委員
淑徳大学社会学部教授、柏女霊峰(かしわめれいほう)氏
児童福祉法の一部を改正…児童福祉法には子育て支援が記していない
→子育て支援事業、市町村におけるコーディネート事業の法定化
高齢者介護の三本柱を子育てに適用(デイサービス、ショートステイ、ホームヘルプ)
市町村に子育て支援を法定化→保育士が園を飛び出し、家庭にあっせんされる。そのため、保育士を国家資格化
以下の3システムから今後の在り方を選択している。
業種転換による総合施設が広がれば幼保一元化の促進へ:保育所と幼稚園の文化の違いを融合するために、いきなり幼保一元化ではなく、総合施設を経由してから幼保一元化へ
※ 総合施設の方が保育園、幼稚園よりたくさん補助金がもらえるなど施設転換の為の優遇措置も考えられている。
H17年モデル事業→H18年実施
幼保一元化
平成16年度は公設公営保育所の運営費国庫負担金の一般財源化→地方自治体としては、公設民営化が促進される状況に
総合施設は新規の建物でなくてはいけないのか。既存の建物を総合施設かする条件とは | |
現在総合施設の議論がされているが、その中で総合施設の機能、サービス、等がまだこれからの議論となる。また利用の方法、利用対象者もこれから。審議会のメンバーで議論するが、それだけでは議論しつくさないので、厚生労働省が現場の声をヒアリングしながら、検討する予定。議論の様子はホームページに記載していく。 |
今市町村のアンケートは国の財源をどの程度あると推定して行っているのか。 | |
市町村でも国がどれくらい財源として確保しているのかわかっていない。しかし、国だってそれでは市町村が困るのは分かってやっているのだから、これは「背水の陣」ではないか。次善の策としては消費税しかないのではないか。また介護保険制度を20歳よりもらう、等も話し合われているが、年金離れのように介護保険ばなれが否めない。そのため、子ども保険を含めて考えて、若い世代の理解を得ることも重要。 |
「幼稚園の先生の方がよく研修している」(全保協ニュース)との発言があったが? | |
幼稚園の先生は研修システムが構築されているが、まだ保育園ではそこまでない。そのため、総合施設を検討するに当たって、人材の研修システムも見直す必要がある。また、総合施設についても、その機会を捉えることも必要かも。 |
総合施設について | |
保育界1月にのっているが、私は総合施設を21番目の施設ができたとはしたくない。総合施設を子育て界を大きく改革する起爆剤としたい。総合施設は厚生労働省ではなく、官房が考えたもの。これまで幼保一元化がなかなか進行しなかったのが、この総合施設で一気に加速するのではないか。 その意味で賢いやり方だなと思う。 |
過疎地では一般財源化・交付金化するとますます厳しくなるのでは? | |
自分としては、次世代支援対策推進として上程した考えなのだが、財源としては社会保険としての徴収が有効だと考えるが、すべての人の了解が必要である。そのために、子育てを社会連帯として捉えて、国民全員に理解して貰うことが重要。最終的な財源として消費税の話もある。 |
次世代育成支援の行動計画の策定に当たって、エンゼルプランの時のようになるのではなだろうか。 | |
県レベルであれば保育協議会の会長であるひとかが参加するのであろうが、市町村レベルではそうはいかないので、ぜひ市町村の議論に加わって頂きたい。 |
国として次世代育成支援は、どの程度本気なのか? | |
厚労省としては、とても真剣であることは感じている。ただし、他のセクションとの調整については、はっきりしていない。今の状態で国民全員に子育て保険を導入すると保育園に対する風当たりが強くなるのではないか。そのため国民全体に子育てについて理解をしてもらうことが大切、そのためには子育て支援団体として一番大きい保育団体が、保育園の利益だけを考えずに、子育て支援全体を考えた意見を言っていくことが大切。 |
「次世代法」はこれまでの少子化対策施策とは異なる点が多い。
まず、民間企業に行動計画の策定義務を負わせるという、子育てに関する初めての国家計画であると言うこと。また、福祉業界ばかりでなく、関係機関を含めていわゆる「子育ての住環境を変えよう」ということである。
社会連帯による次世代育成と言う言葉が用いられて、児童福祉施設だけでなく、子どもは「社会の宝」として地域ぐるみ、企業ぐるみで子育てを奨励しましょうという事だろう。
総合施設の話は、「どのような形になるかは今後の議論次第」として全く情報は聞けなかった。ただ、研究会としてはただ幼稚園と保育園が合わさった様な21番目の児童福祉施設が出来ただけ、という風にはしたくない。
総合園への転換をせざるを得ないような措置・補助制度が生まれてくるかも知れない。
その時、我々がどう判断するかは個々にかかってくるのではないだろうか。賢いやり方だなとは思うが、幼保一元化がこれで落ち着くのではと感じた。
引き続き、情報をさぐる必要がある。
次世代育成支援対策推進法の柱として、高齢者介護の三本柱(デイサービス、ショートステイ、ホームヘルプ)を、育児に取り入れてみようという動きがある。そして財源を介護保険ならぬ子ども保険を適用し、国家負担を軽減しようとするもの。高齢者介護では成功したが、それがそのまま子育てに当てはまるかどうかはやや疑問である。
あとは、国民全体に負担をかける子ども保険がどこまで理解されるかだろう。研究会としては児童福祉施設の団体として最大である保育団体が、国民に理解を求めることが有効であると言っている。もし理解が得られず、年金離れみたいなことになったら、やはりあとは消費税しかないのだろうか。
(県広委:永田)