SOFU News Letter Nor 10 th, 2004

第24回全国私立保育園連盟青年会議鹿児島大会

 鹿児島といって思い出す人物といえば、西郷隆盛と大久保利通だろう。この二人は幕末という混乱期に、地方から中央を下し、明治という新たな時代を切り開いた。そしてまさしく、現在の保育界も改革の波を迎えている。このタイミングに全国大会が鹿児島で行われるのは、何かの因縁を感じざるをえない。
 去る11月の4、5日、鹿児島市にて第24回全国私立保育園連盟青年会議鹿児島大会が行われた。慰安旅行と間違っていた諸氏もいたが、熊本県より28名という過去最多の参加人数をみても参加メンバーの意気込みが伺えるというものである。
  まさしく大会テーマ「チェスト行け!!〜今子どもたちの翼となるために〜」の通りである。決して羽を伸ばしてきただけではない!!  以下、熱い鹿児島大会のレポートお届けする。

1日目


【開会式】

 

【各分科会報告】

第1分科会
  「社会連帯による次世代育成支援に向けて」
  講師:淑徳大学教授 柏女霊峰氏
 

 第一分科会は、次世代育成支援について保育ひいては社会福祉政策という観点から考えるというものであった。分科会の流れとしては、講師である柏女先生の講義が90分程あり、その後グループ討議・発表それに対する柏女先生の講評、最後に質疑応答という流れ。
 まず講義については、少子化対策といった問題に対するこれまでの保育・社会福祉政策の展開を時系列的に解説していくといったもので、現在の深刻な少子化という問題を理解・対応していく上で基礎となる議論の講義というものであった。またその後のグループ討議では、フリーディスカッションであったが、私の入ったグループでは柏女先生の言う社会連帯とは「子ども保険」ではないのか?それは具体的にはどうなるのか?またその是非は?という点で盛り上がりをみせた。
 全体の感想としては、政策の流れ・展開についての報告といった印象が強かったが、一般財源化という問題で隠れがちな、今後の保育行政に対する厚労省のスタンス等について、改めて考える良い機会となるものだった。

(緒方)

 

第2分科会
  「保護者と保育所をつなぐ家族援助論」
〜子育ての支えとなるために〜
  講師:大阪市立大学教授 山縣文治氏
 

 保育所とは、地域そして住民に信頼されいい仕事ができれば生き残れるだろうか。そうではないと思います。生き残る為には絶対総合施設だと強く思います。
 こういった内容から第2分科会はスタートしました。私たちはこの現状を受け入れていかなければならないのです。
 講演といった感じではなく、先生自身がマイクを2本持ち、受講者の意見を聞き、グループワークを取り入れながらの眠くない2時間30分でした。
 グループでは「機関の特性を知る」という事で、それぞれの機関の長所、短所を出し合い、その後意見交換が行われ、各保育での虐待の問題、各地域での機関の違いなどが述べられ、中でも虐待の問題では、皆さんの様々な熱い意見が聞けました。
 最後に「信頼関係とはお互いが謙虚になる関係、そして一緒にやっていく姿勢そういった関係をどう築けるかということが大切です。」この言葉で第2分科会は幕を閉じますが、とても考えさせられる一言でした。

(三宅)

 

第3分科会
  「保育の根っこにこだわる園内研修」 〜人的環境の資質向上を求めて
  講師:白梅学園短期大学客員教授 村田保太郎氏
 

 一般財源化等で量的な拡大であって、保育の質的なものは無視されている。保育とは本来子どもの育ちを最大に尊重すべきであり、保育士は情熱をもって子どもを愛さなければならない。しかし、若い保育士ほど自分に都合の良い保育をしてしまう。本来職員研修とは何のために行うのか。園の基軸があって皆がそれに共通理解を示し、「気づき」というものを持つ為である。園内研修を行い、保育に対する情熱、子どもに対する情熱、自分で作ろうという情熱を持つことが重要である。研修方法には園長主導型、職員主体型等様々あるが、大切なのは職員が共通の認識を持ち、職員間が一体となり、かつ柔軟な組織が確立されていることである。

(吉原)

 

第4分科会
  「人事制度を見直す」〜経営者として足下を見直してみませんか〜
  パネラー:福岡県私立保育園連盟青年部長 白山勝也氏
      〃   総合福祉研究会本部事務局長 松本和也氏
      〃   総合福祉研究会福岡県支部長・税理士 権藤説子氏
 

 この分科会では福岡県市立保育園連盟青年部と総合福祉研究会との共著で創られた「これでわかる!新しい人事制度のすすめ」(←欲しい人はクリック)を利用して話を進められた。以下その要約。

 これまでどの保育所でも人事院勧告の俸給表による利用してきた。しかし、今後保育単価の積算根拠は非常に危うくなり、人事院勧告も意味をなさなくなる時代がくる。そこで、人事考課制度を導入しなければ、民間保育所は破綻してしまう。詳しくはテキストの中に具体的な数字を含めた説明があるが、その方法論としては、

  • 保育マイスター制度…保育の職人として保育スキルを段階的に認定するもの。
  • コンピテンシー人事制度…経営者と労働者で決めた項目について相互評価する。

 現在、人事考課は人件費コスト削減の目的が多いが、本来職業能力の向上の為であって、そのプロセスとしてコストが削減される事が理想である。その為には経営者がしっかりと保育ビジョンを持ち、職員とよく話し合ってお互い納得のいく人事考課を創り上げ、実行しなければならない。

(永田)

 

第5分科会
  「ひろがれ あそび心」〜響きあう大人と子ども〜
  講師:あそび・劇・表現活動センター「アフタフ・バーバン」 千葉千江子氏
 

 子どもたちの心を本当に理解するためにはどう向き合えばよいのか。それは大人であるとか、子どもであるとかの定義に関わらず、人として相手に伝えたい思いがしっかりあり、その相手のことをきちんと受け入れることからすべてが始まります。「伝えたいことを、伝えたい人に、伝わっていますか?」この問いかけから千葉千恵子先生の分科会が始まりました。
  自己表現することを苦にせず、いかに面白がれるか。相手をしっかり見ることにより、一人一人の違いを受け止められるか。予期せぬ事を恐れずコミュニケーションを楽しめるか。これらを柱に、遊び会う中で行ったワークショップにより、普段何気なく使っている「遊ぶ」ということに、無限の広がりと限りない可能性があることを、収支穏やかな雰囲気と笑い声の絶えないなか遊び、今この時からの「人との関わり合い」が楽しくなるであろう事を予感させる研修会でした。

(鹿児島県青年部速報より)

 

懇親会

 RIKKIの妖艶なるステージを観ながら、芋焼酎に酔いしれる懇親会であった。後半は鹿児島県青木青年部長自ら抽選を行う、「大抽選会」が開催され、熊本県は数にものを言わせて様々な商品をGet。しかし、一等の「森伊蔵」は前会長の帥(ゆはず)先生がまさに「おいしいとこ取り」で持っていった。滋賀県からは次年度開催のアピールで「マツケンサンバ」ならぬ「シガケンサンバ」を熱唱。素人まるだしのステップに厚労省の役員さんもハートを打ち抜かれた。

 

 

2日目


【記念講演】
  「私の取材ノートから」
  講師:NHKエグゼクティブ・アナウンサー 松平定知氏
    「その時歴史が動いた」キャスター
 

 NHKの顔ともいえる松平氏の講演。前半は自らの育児体験を元にしたお話。後半は「その時歴史が動いた」さながらの歴史絵巻が展開された。 番組のファンである先生からは「ナマ『歴史が動いた』だったね(*^_^*)」との声もあったが、ここには割愛させて頂き、前半のみの要約を載せる。
  今年の台風、地震被害の中で、人のために何かできる人をたくさん見ることが出来た。そのような感覚は幼児時代に養われると思う。子どもが小学校3年の頃、自転車でたおれたおばさんを助けて、学校に遅刻した。子どもが私に謝ると、「どんどん遅れなさい、もし見捨てて学校に間に合ってもちっとも嬉しくない」と言った。思いやりのある子どもに育ってくれたと思っている。
  最近、言葉の使い方が気になる。乱暴な言葉遣いとフレンドリーな言葉は違う。乱暴な言葉を通して子どもと親密になろうとすることは、間違っている。アイフルのCM「お父さん結婚式でこれ着なよ」娘が父親に使う言葉ではない。乱暴な言葉で育った子どもがこういう言葉を使うのではないか。子育ての中では正しい言葉で子どもとの信頼関係を結んで欲しい。
  立身出世を目指す人ではなくて、他人の事を思うことが出来る人を育ててほしい。

 

 

情勢報告
  講師:厚生労働省雇用均等児童家庭局
   保育課保育指導専門官 角田雄三氏
 

 情勢報告の中には、最近新聞等で聞く以上の話は出なかった。以下福田先生のレビューを引用する。
  三位一体の動きなどで一般財源化などの要請などがある。次世代支援法および新新エンゼルプランなどが進められている現状下、福祉の視点に立っても国が均等にこれを進めていくことが望ましい。従ってこういった施策が実施され安定するまで一般財源化などの実施は好ましくないと考える。

 

 

閉会式

 次年度開催地である滋賀県より「世界で一つだけの花」を生ギター演奏でアピール。オーディオにうるさい福田先生によると「ミスチューニングなところが瞠目」と感動をわき起こした。

 


【鹿児島県の保育園視察】

大会後、鹿児島市の2保育園を視察した。

 両保育園とも、入ってすぐに目にするのが大型液晶テレビに映し出される子どものスナップ写真。保育士がデジカメで取り貯めた写真をCDに焼き、週ごとにスライドショーで流しているとのこと。欲しい写真がある保護者はCDを借り出し、自分で現像に出すシステムで、非常にスマートに感じた。テレビ前は保護者の交流の場としても活用されているとのこと。
  又、両保育園に共通していえることは、近年定員増を行い、園舎を増築している事。室内にはいると、苦心して増築した後が見られた。鹿児島市全体が待機児童解消の為、増員を行ったのだろう。特徴的なのは職員の数の多さもさながら、3分の1の保育士がフリーで勤務に当たっていた事。10時までという保育時間に対処するためだが、熊本では余り聞かれない気がした。御所保育園では分園として乳児保育所を有しており、園長が常勤する必要がないため、オートロックに監視カメラと防犯対策は完璧。危うく閉め出される熊本メンバーもいたほど。全体的に施設も職員も明るく感じたのは、鹿児島の南国気風なのかもしれない。

(文責:永田)

 


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