平成23年2月12日発行
平成23年1月24日、福祉センター3階会議室にて、広報調査委員会の主催による「第1回保育問題勉強会」が開催された。県下各地より42名の会員が参加。
今、知りたい「保育に関する課題・問題・諸事」について、協会会員・外部識者を講師に、小規模セミナー形式で広報調査委員会・調査会議が独自実践するもの。大規模な研修では、なかなかできない細かい情報提供や参加者間の突っ込んだディスカッションができる場を提供することを目的としたもので、その第1回目である。広報調査委員会・嵯峨副委員長が司会・進行をつとめた。
1月15日(土)の「子どもを守る熊本緊急集会」で、九州の保育関係者が新システムに反対ということを明確にしたことを強調。
本勉強会は広報調査委員会を中心に新規に企画したものであり、今までにない中身のある研修となるものと期待すると挨拶した。
『「チルドレン・ファースト」に基づく子ども・子育て支援を目指して~岡崎トミ子 元大臣~』の資料を中心に現在の保育情勢に触れながら、結婚や出産・子育てをめぐって国民の希望と現実が大きく乖離している状況であることを、先ず説明。日本の女性の就労状況はいわゆる「M字カーブ」を描いており、子育て時期の女性の社会進出が伸び悩んでいる。
また男性が働きすぎている状況から、父親の育児参加の機会が少ない。母親の子育ての「孤立化」、近所づきあいの希薄化から子育てに関する負担感が増加している。このような現状から民主党が「子ども・子育てビジョン」を策定し、そこに様々な数値目標が掲げられていると解説した。
保育所の定員数を上げたにもかかわらず待機児童は依然増加中。そこで、新システムの前倒しとして「待機児童解消『先取り』プロジェクト」がスタートした。このプロジェクトは、特に待機児童が多い都市部に集中的に整備費の上乗せ支援を行うことや、質を確保できれば認可外保育園にも公費助成を行うなど「5つの実施モデル」を柱に実行されていることを解説。
国の一般会計歳出額(平成22年度当初予算)のうち、社会保障費が占める割合は29.5%。なお増加し続けるため社会保障費が財源不足に陥るのは必至。その穴埋めに消費税を充てるしかないのではないかという案については、その他各種代替案を検討しても良いではないかと述べた。
続いて平成2年の「1.57ショック」からこれまでの様々な子育て支援に関する取り組みや流れを紹介。待機児童数のうち7割を占める0~2歳児をどうするか。幼保一体化でこれが解消されるかどうか、今後のワーキングチームでの議論に期待したい。
幼稚園側からの猛反発により提出された新システムによる幼保一体化の代替案1~案5を説明。保育料の公定価格や保育実施の応諾義務等、保育園と幼稚園間での様々な相違点があることから、「案5」(保育園のみが子ども園へ、幼稚園は現行維持)で話が進む可能性がある。しかし幼稚園は、そのまま存続となったとしても、都市部の未満児の受け皿は増えるのか、どうなるのか?新システムもいいが、目の前にいる待機児童をどうするのか?喫緊の課題はここにあるのだと強調した。
昨秋来熊した厚生労働省少子化対策室・黒田課長は「新システムは待機児童解消対策ではない」と強調したが、マスコミは、待機児童対策と新システムを直結している感が否めないと指摘。
新システムについて、強いてメリットを挙げるとするならと前置きし、「子どもと保育総合研究所」の冬季セミナー(1/8,9)で、無藤教授(白梅学園大学)は「新システムを導入する理由として、消費税を上げるチャンスであり幼児教育・保育への財源を増やすチャンスであること。そして今を逃すと先20年は保育の質を上げるのは難しい」と述べたことを挙げた。
また「幼保一体化を実行する際の必要整備として、保育所への学校教育法、幼稚園での預かり保育を児童福祉法に位置付けることになり、こうなると法的に教育・福祉の両機能を備えることになり、補助が量的にも拡充されると期待できるのではないかと分析。さらには、学校内に保育園が入ることにより、園長の必置義務や研修権の確保の面が保育園に適用されることにより新たな財政措置が期待できるのかもしれないと指摘した。
日々、情報は変化する。皆さん、熊本県保育協会のHPを毎日チェックして欲しいと述べ、今回のレクチャーを閉じた。
~ 新会計システムへの移行決定 ・ 移行へのタイムスケジュールついて~
平成25年には、保育園はもちろん、社会福祉事業を営む法人の会計が全て例外なく一本化される。これが新会計システム(基準)である。
昨年暮、新会計基準の素案が策定された。現在パブリックコメントを募集しており、保育所を含めたすべての社会福祉法人が、平成25年4月1日に移行するスケジュールとなっている。平成23年4月1日に施行となるが猶予期間を1年間設ける。平成24年の1年で準備を完了させることになる。
~ 移行への留意点 ~
余裕を持った準備期間が必要。内容が大幅に変わるため、理解した上、移行の手続きに移るため。
また、新会計基準に対応した会計ソフトを導入するする必要がある。導入時期や費用負担額などについて現在ご利用中のソフト会社と早急に検討された方が良いかもしれないと述べた。
新会計へ移行する背景と目的について以下の通り説明。
○現在の社会福法人では、各種会計ルールが併存していて様々な問題が発生している。これを一本化することで事務の簡素化が期待できる。
○社会経済状況が変化し、一層効率的な法人経営が求められる。公的資金や寄附金等を受け入れていることから、事業の効率性に関する情報の充実や事業活動状況の透明化を計る。
新基準(案)の基本的な考え方としては、法人全体の財務状況を明らかにすることが最大の目的と言える。
第三者から見て経営分析が可能なものにするとともに、外部への情報公開を前提にした作りにすることがポイントである。「ブラックボックス」と思われてきた社会福祉法人の資金の動きを透明するというねらいは強いかもしれないと分析した。
新システムは、社会福祉事業を営む全法人に適用するので、できる限り計算書類を簡素化したいという目的がある。現行4種類の計算書類を、新システムでは、財務諸表(これが開示資料となる)に加えて、付属明細書と財産目録がある。しかし、よく見ると、作成しなければならない書類は実際増えてくるだろう。
また、新たなポイントとして「拠点区分」がある。「拠点」いわゆる設置場所であり、事業運営のエリアを施設・事業所及び事務所別に区分するという方式である。本部会計、法人の自主決定で、どの拠点区分またはサービス区分に置くこともできる。なお、収支計算は拠点区分ごと実行、予算単位も拠点区分ごと峻別することになるようだ。
また、財務諸表等の作成については、同一法人が運営する施設数ごとに作成する関連書類が出てくること、加えて財務諸表注記が拡充されることなど説明した。
さらに、注意すべきポイントとして法人の役員間すなわち「関連当事者」間の業務取引については、その内容の開示が義務づけられること指摘した。
ここでいう関連当事者とは、①当該社会福祉法人の役員及び近親者であって、②前項の該当者が議決権の過半数を有している法人==と定義されている。また、ここで言う「役員」は「有給常勤役員」に限定されているので、一般的に保育所では該当しないだろうとのこと。また、開示対象範囲としては年間100万円を超える取引の場合であることを説明したが、いかに法人資金の内容透明化を重視しているかがここからも伺えるのではないかと述べた。
その他の主な変更点については、
- 基本金・国庫補助金等特別積立金の取り扱い
- 引当金の範囲
- 公益法人会計基準(平成20年4月)に採用されている会計手法の導入
- 退職共済制度の取り扱いの明確化
- 共同募金配分金等の取り扱い
の5つがある。
基本金・国庫補助金等特別積立金の取り扱い」については、1号基本金及び国庫補助金等特別積立金における「固定資産限定」が変更され、また4号基本金が廃止、更に国庫補助金等特別積立金に「施設・設備整備資金借入金の償還補助金」が追加される。「③公益法人会計基準(平成20年4月)に採用されている会計手法の導入」については、ワン・イヤー・ルールをはじめとした6つの会計手法が導入される点などを説明された。
最後に、これからわずか2カ年の移行期間であるが移行するのは決定されたことであるので、早い段階で移行できるよう体制作りをお願いしたいとして、今回のレクチャーを締め括った。
その他、資料をもとに各種説明を受けたが、内容が多岐にわたり、全てを収録するのは不可能。会員用に資料を添付するので、是非そちらを参照していただきたい。
第一回目の、広報調査委員会・勉強会は、当初30名定員で企画したところ、予想を上回る参加希望があり、スタッフもあわせると約50名が聴講することとなった。このため会場がせまくなり、参加者の皆さんには窮屈な思いをさせてしまった。本点、先ず反省するところである。
今回の勉強会の柱は二本。現在、保育関係者 最大の関心事である「保育制度改変」、それと制度問題に隠れて表面化していなかったが、すでに導入が決定されている「新会計システム(新会計基準(案))」をもう一本の柱とした。
「保育制度改変」については、現在、広報調査委員会・ 調査会議委員で、全国私立保育園連盟・青年会議の監事である福嶋氏に講師をお願いした。同氏は、平成18~20年の2年間、同会議の事務局を務め、その間、確立した情報網は、今も健在。 保育関係の情報が熊本県ではどこよりも早く彼のもとに集まると言っても過言ではない。
今回のレクチャーでは、保育制度改革の変遷(前政権から)とワーキングチームでの協議内容などを基に制度改革の現状分析をお願いした。
保育制度改革を語るとき、どうしても内容が非常に多岐・複雑になり、解説には、時間が不足した感も否めなかったが、改変のポイントは十分参加者にご理解いただいとものと思う。
「新会計システム」は、保育業界ではなかなか語られることが無かったが、水面下で確実に改変が進められてきたもの。昨年12月には素案が提出、現在、最終的な内容の詰めが行われている。
遅きに失した感もあるが、ともかく福祉会計の専門家である内田氏に、本件講師をお願いしたところ快諾していただき、今回のレクチャーが実現した。
「新会計システムについては、保育園はもちろん、社会福祉事業を営む法人に対しては、例外無く切り換えとなる」という事実をまず、わたしたちは受けとめ、準備を開始しなくてはならない。セミナー参加者のほとんどがそのように感じられたことだろう。
「本来なら3時間ほどかかる内容を1時間に集約したので、はしょりにはしょった」、とのことだったが、新会計のさわり部分を聞いただけでも、専門知識の無いものに対応できる内容ではないことは、容易に理解できた。レクチャーが進むにつれ、会場には不安が充満、質疑応答でも「内田講師にお願いすれば、対応してくれるのか」==という切迫した質問も飛んだ。
また、どう考えても保育制度改変と会計システムは、「直接契約制」の導入から見ても、保育制度改変と連動しているように思えてならないと、ある参加者が発言。
保育制度の改革の先行きは、さらに不透明なものとなっているが、新会計システムは外堀がすでに埋められてしまった。我々マネジメントの準備は待ったなしだ。
今回の参加された皆さんにはアンケートをお願いしている。その結果を評価して、今後も勉強会を提供する予定である。 (委員長 福田)
( 記録・広報調査委員会・調査会議 元村、 備海、 緒方)
(記録・記事・発行総責任:熊本県保育協会 広報調査委員会委員長 福田 )